旧ゲーセン【∀muZe】

『あ、そだ。ご縁と言えば…突然なんだけど』

私の能力者としての初めての依頼が終わり、また『大いなる災い』との戦争も、“乙女の決戦”も終えて間もないある日。
郵便受けを覗きにいった時に不意に見つけたのは、その依頼でご一緒した先輩からのお手紙でした。昨日私が改めて依頼のお礼を、ご一緒させて頂いた先輩能力者の皆さんにお手紙していたのですが、早速そのお返事を下さったようです。

そしてそのお手紙の後半に書かれていたのが――。

「……はて、『ゲームセンター』…とは??」

先輩からの結社へのお誘い。初めてのことですので、大変嬉しく感じます。まして、能力者として未熟な私を、ベテランの先輩がお誘い下さったのですから吃驚。
ただ、その結社は“変わっている”のだそうです。何でも、『ゲームセンター』なるものを改築して使っており、場所も地図が無ければ迷うようなところにあるとのこと。

(でも……とても面白そうです。早速団長さん宛てに入団届けを投函して参りましょう。)


          *          *

そして某日夕方――。

「……困りました。」

本日一体何度目になるか分からない溜息を漏らす泰花。
あの後入団を快諾され、結社までの地図が同封された返信を受け取ったのはいい。
……が、何分、いや何十分経とうと中々目的地に辿り着けないのだ。

(このままでは下手をすると帰り道も……参りました、どうしましょう?)

地図を片手にきょろきょろと周囲を見渡してみるが、さっぱり分からない。
諦めて今日は引き返そうかと思いかけた刹那、やや離れたところから誰かの呼ぶ声が聞こえた。

「おーい!そこのお嬢さん、お困りかーい?」


          *          *

「まぁ……変わった建物ですね?少し古めかしい……。」

ボーイッシュな少女としっかり者の小柄な少女ふたりの案内で、漸く目的地付近まで辿り着けたのは、日没も間際な時間だった。冬用の地の厚い着物を着ているというのに袂や裾から寒い北風が肌に触れ、僅かずつ体温を奪っていく。

「あの、お二人ともありがとうございました。では私は……」

この先は自力で探しますので、と言い掛けて泰花は一瞬固まった。
「ゲーセン」とやらの入り口から見慣れた先輩が姿を現したから。

「あの、もしや……?」

恐る恐るかけた声は、やがて泰花を誘った少女との歓喜のユニゾンを成し。
そして其れは瞬く間に温かな人々の声に包まれた。

結社【∀muZe】への入団が泰花にとって意外な転機となろうとは、このときの本人には知る由も無い――。

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あとがき。
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月城まりあ と、言うわけで結社【∀muZe】へ泰花が入団させて頂いた当時の事を回想しつつ書かせていただきました。
うーん、もうちょっと場面とか、上手く書けたら良かったんだけどな……。
あとは、この結社で初めて「入団者紹介SS」を書いて貰ったんですよね。今回のSSはそんな紹介SSと実際にやり取りさせて頂いたお手紙を読み返しながらの執筆でした。

そういえば、このときに泰花が「フリッカーさん達のライブに行ってみたい」って言ってて、先輩が「じゃあ次の文化祭は招待するね〜」なんて話をしてるんですよね。
で、先日行われた学園祭、本当に招待してもらって。
重ね重ね、背後の私からもお礼申し上げます。(深々……)

あと、最後の1行が微妙に意味深なのは……あまり気にしないで下さい(苦笑)いい表現が見つからなかったんです!
でも「意外な転機」を迎えたのは事実なんですよ。泰花がこの結社から毎週のように黙示録やバトルカーニバルへ出るようになってから「ジョブチェンジ」という選択肢に至り、バイトを青龍拳士から魔剣士へ変えることになりましたし、いろいろな刺激を受けて「箱入りお嬢様」を徐々に脱却していったのもこの結社が切欠ですし。……最近は更に某友好結社や若君とのやりとりで急速に色々感化されてきているようですがっ!

ではでは…SSに続けてあとがきまで長くなっちゃいそうなので今回はこの辺で。
次辺りから、泰花が学園に来る前のお話や、逆につい最近(2009年7月頃)の出来事に基づいたお話を書いていこうと思ってます。仕上がりペースはのんびり気紛れですので、ゆったりとお待ち下さい。

ではではでは、月城まりあでした。

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