私が通う銀誓館学園があるのは、神奈川県の鎌倉。
まりあさんのお部屋から通わせて貰うには、少し遠い場所でした。
『寂しくなるわね……たまには、仕事の合間を見て遊びに行くわ。困ったら、いつでも連絡していらっしゃい。仕事中でも緊急なら電話に出るから、ね?』
そう、言いながらまりあさんが私の頭を撫でてくれた、2度目の門出の日。
その日の夕暮れ近く、私は銀誓館学園近くの新居へと足を踏み入れました。
そこが、私が決めた新しい生活の場――下宿結社「桜咲荘」。
築数十年は経過しているであろう、赤茶けた煉瓦造りの高い建物。そしてそのとなりに樹齢は如何程かわからないほどの、背の高い桜の巨樹。
庭は広く、一面に蒲公英の葉や野の草、芝生が育っていて。
(「『桜』が『咲く』場所……。春の良く似合いそうなところですね。楽しみです。」)
私は建物を見上げながら、ふと笑みをこぼしました。
新しい学園、新しいお友達、新しいお部屋、優しい管理人さん、温かな同居者の皆さん……。
私は、このお部屋でこれからどんな事を経験していくのでしょうか――。
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あとがき。
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今回は、今泰花(b58524)が代理で管理人をしている下宿結社「桜咲荘」のお話です。珍しく結構短め。
まだ桜咲荘に正規の管理人さんが居て、下宿として解放されたばかりの、2月のとある早春の日のお話。
あれからいつしか長い時間が流れ……本当にいろんなことがありました。
そんな訳で、ひょっとしたらいつか「桜咲荘202号室」の続編っぽいものを書くかもしれません。
でも、期待をせずに……。